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2009年1月 5日 (月)

年末年始に読んだ本 その1

「生物と無生物のあいだ」Photo

福岡伸一著(講談社現代新書)

生命とは何か?

その定義に挑んだ本。

ウイルスの発見の物語から始まり、DNA発見の戦い、さらには、ES細胞まで、科学者たちが生命のメカニズムに挑んだ軌跡をつづったドキュメンタリー。

著者は生物学者であるが、文章の上手さ、文学的センスが光ります。

この本で、野口英世のアメリカにおける評価と、日本での評価では大きなギャップがあり、野口の発見の多くは海外では評価されていないことを初めて知りました。(昔はよく伝記を読んだものですね)

それでも野口が科学者としての成功にこだわったり、プレイボーイであったなど、人間臭いところを感じ、かえって野口英世を身近に感じました。(お札に収まるだけのことはある!)

さらに、ワトソンとクリックがDNAの構造を発表した経緯もとても面白かっったです。生命は自己複製するという仮説から、二重らせん構造を思いついたというのは、まさに感性のなす業だと思いました。神の啓示を得たのではないかと思えるくらい。ワクワクしました。

また、著者の福岡氏自身の大学での体験を時々自虐的に開示していますが、大学の構造的な問題やしがらみの強さなどにも触れており、改めて権威で成り立つ組織の強さともろさを感じました。

著者は自らの少年期の体験、世話をしていたトカゲの卵の孵化を待ちきれず殻を破って中を見てしまった原体験から、今日の生物学者としての職業選択の必然性を語っています。

職業を選ぶということは、こうした原体験があるかないか、ワクワク、ドキドキなど感性を揺るがすリアリティが元になっているかどうかで、その後の人生の歩みは大きく変わってくるものだなと改めて思いました。

生命に対して、著者は結局、「自然の流れの前に跪く以外にない。ただ生命のありようを記録するのみ」と結んでいます。

生命の強さと偉大さを改めて感じたとともに、それらを軽視することの危うさを改めて感じた一冊でした。

現代の経営も生物学的観点でもっと見直してよい時期に来ているのではないでしょうか。

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